近年国内で、熊の目撃情報や被害が多発しています。要因は様々あるかと思いますが、双方が共存できる環境づくりがとっても大切です。人も熊も、同じ地球上に住まう生物の一種なのですから。

と言っても、やっぱり熊は怖いよね。熊の住処である山で、安全に登山や釣りなどのアウトドアを楽しむ方法は何かあるかな?



特別な道具など無くても、私たち人間の意識・行動で熊の被害を抑えることはできると思うよ。「熊と出会わないこと」こそが最大の熊対策。自分が会わないために、他人に会わせないために、この記事で説明するね!
近年、日本でも熊の目撃や接触のニュースが増えていますが、原因のひとつは、人間の行動(食べ物やゴミの管理不足)によって引き起こされています。
意図的ではなくても、食べ残しやゴミを登山道に落として、熊に「食べ物」を与えてしまったら、熊は「人間=食べ物」と結びつけてしまう可能性があります。そうなってしまうと、食べ物を求めて登山道に出現してしまいます。自分の不注意によって、次に訪れる登山者、ハイカーが被害にあってしまいますので、一人ひとりの食べ物・ゴミに対する意識と行動が大切になってきます。
熊は、食べ物への執着が強い動物。人間の食べ物を求め、人間を襲う熊は、駆除されてしまいます。人の命も熊の命も平等な「ひとつの命」。双方の命を守るために、熊に食べ物を与えてはならないのです。


本記事では、熊と出会わないようにする、根本的な対策、「熊に食べ物となるものを与えない」ようにする方法をご紹介します。山に入る前にぜひご参考にしてみてください。みなさんのアウトドアが安全で楽しいものになりますように。
山に入る前にやっておきたい「準備」
森の中で出会う熊は、恐ろしい存在であると同時に、その土地に古くから暮らしてきた野生の住人。
彼らにとっても人間は本来、避けたい相手。でも、私たちのちょっとした油断が熊を呼び寄せてしまうことがあります。
そのきっかけの多くが「食べ物」と「ごみ」。つまり、私たちが気をつければ防げることなのです。
山に行く前にできること
持って行く食べ物とゴミの処理方法をあらかじめ準備する
熊に餌付けするような迷惑な観光客は、ハイカーにはいないと信じたいですが、誰もわざと熊に餌を与えるつもりで食べ物を置いて行ったり、ゴミを捨ててはいないと思います。
例えば、トレイルでおにぎりを食べていて、ぽろっと落としたり、スープの残り汁を捨てたり、食材を巻いていたラップが風に飛ばされたり。「熊さんどうぞ!」と言って捨てないですよね。
ですがこういう状況でも、熊にとっては、餌付けされているのと同じことなんです。
だからそもそも、ゴミになるものを持って行かない、飲み干せないスープは作らない(残飯を捨てない)といった食料準備計画が必要です。そういったことで不注意によるごみを落とすリスクなど減らすことができます。
自宅や車内、宿泊先で、ジップロック等の密閉できる容器にまとめて行動食をパッキングする方法です。ジェル・液体系はできませんが、エナジーバーやナッツ、柿ピーなどでトレイルミックスを作ります。数種類いれたり、エナジーバーは折って入れることでいろいろな味が楽しめて、飽きずに行動食を楽しめますよ。


熊の嗅覚のすごさ



熊ってどれだけすごい生き物なの?



熊はとにかく嗅覚がすごいんだよ!
熊の嗅覚は人間の数千倍、犬の中で最も嗅覚の優れた犬種ブラッドハウンドの7倍以上の嗅覚を持つとされ、数キロ先の匂いも察知できるほどだよ。
しかも熊は遠く離れた場所でも、開封済みの食品、密封された食品、缶詰、ゴミ、洗面用具の匂いを「嗅ぎ分ける」ことができるんだ。
モンタナ州魚類野生生物公園のグリズリーベア管理スペシャリスト、キム・アニス氏によると、クマは他のどの感覚よりも匂いを利用して、餌や仲間を探したり、他のクマとコミュニケーションをとったりしているらしいよ。



え!犬より鼻が利くんだ!しかも嗅ぎ分けられるなんて!じゃあ、熊に隠し物はできないね。
もう一個聞いていい?熊が人間の食べ物を食べちゃいけないのはなんで?



いい質問だね!
美味しくて高カロリーな人間の食べ物を知ってしまったクマは、自然の食料源を探す意欲を失ってしまうんだ。
一日中どんぐりや栗を求めて何キロも歩き回るのか、それとも夜になってからキャンプ場を襲うのか?クマは毎回、最も労力の少ない選択肢を選ぶようになるんだ。
さらに、クマは驚異的な記憶力を持っており、一度遭遇した食料源を忘れないんだ。もしその食料源が人間と結びついている場合、それは人間にとってもクマにとっても危険なものとなるよね。



一度クマが食べ物に出会い、食事の機会を人間と関連付け続けると、クマは「食物条件付け」を受けるようになり、人間とクマの遭遇が危険なものとなる可能性が高まるんだ。



なるほど!だから熊は食べ物への執着が強いんだね。
この「食物条件付け」ってなに?



食物条件付け(状態)とは、
食べ物=人間となって、食べ物や、食べ物になりそうな見た目や匂いのものを探す行動がより攻撃的になるんだよ。
そうなると、クマと人間の遭遇の頻度増加につながり、人間やクマが怪我をしたり、最終的に、人間が熊に襲われる、そしてそのクマが排除される事態につながる可能性があるんだ。
私たちが「におわない」と思っている包装済みの食べ物や、食べ終えた直後の袋でも、熊にははっきりと伝わってしまうのです。
さらには、日焼け止め、歯磨き粉、整髪剤など香りのするものも熊の興味を惹きつけます。
「匂い・香りは残っていないか?」を常に意識することがとっても大切です。
人間が思う以上に「わずかな匂い」がリスクになります。
「クマの嗅覚はその優れた記憶力と結びついており、それが一体となって、広い生息域で食べ物を見つけるのです」と、グリズリーベア管理スペシャリスト、キム・アニスは語る。「クマは子クマの頃、母親と一緒にその場所で食べ物を見つけたことを覚えていて、10年後にその場所に歩いて戻ることができるのです」。
トレイルでのゴミ処理と食べ物の扱い
クマは本来好奇心旺盛な動物です。今あなたが持っているモノが、クマが以前に食べた経験がある場合は、熊にとって調べる価値があるということ。もしそれが本当に食べ物のように見えれば、しつこく試すのをやめないでしょう。
クマがすでに食べ物を探しているのであれば、クマの行動を止める術はほぼありません。好奇心旺盛なクマが近づいてきたら、最優先するのは、食べ物を奪われないようにすること。
クマのいる地域では、食料ロッカー、車内、クマ用キャニスター、またはフードハンギングを備えたキャンプ場が、食料、ゴミ、洗面用品を保管する最も安全な方法です。クマ用キャニスターは、どんな地形にも最適な、持ち運び可能な食料ロッカーです。


安全な食料保管は、クマから食料を守るだけでなく、クマが人間との接触に頼って食料を得ることを防ぐことにもつながります。食物条件付けされたクマは、人間からより簡単に餌を得られるようになれば、自然の餌を求めるのをやめるでしょう。
- ゴミは必ず持ち帰り、小さなティッシュや包み紙も残さない。(小分け包装のものはなるべく持って行かない)
- 食べ物の残りや汁を地面に捨てない(熊を誘引する最大の原因)。埋めるのもNG!
- 調理をした場合は、洗い物の水も飛び散らせず、可能なら持ち帰る。
- テント泊では食料をテント内に置かず、吊るすか、専用の容器に保管する。
クマが絶対に匂いを感じない、または実際にクマを抑止する食べ物、香り、スプレーは存在しないと言われています。真空パックされた食べ物や、フリーズドライ、缶詰でさえ嗅ぎ分けられます。
なので、どう防臭するかに力を入れるより、食べられない工夫をしなければなりません。
動画は、アメリカ国内でもっとも普及しているBear Vault社製ベアキャニスター(携帯食料ロッカー)です。アメリカ国内の熊の生息地帯で、バックパッキングをする際、このベアキャニスターの所持が義務付けられている州もあります。
動画内、蓋を開けようとする知性がありますが、本体は滑りやすく、蓋には特殊なロック機構があり食料を食べられません。
アメリカのキャンプ場に見る熊対策
日本よりアウトドア市場が圧倒的に進んでいるアメリカのキャンプ場(熊の生息地内)では、ベアボックス(熊よけの鉄製食料庫) が各サイトに設置されている場所も多くあります。利用者はすべての食べ物や匂いの出る物をこの中に収納するルールになっており、熊から食料を守ってくれます。


さらには、共有のゴミ箱も熊対策が施されています。


キャンプ場にベアボックスがない場合は、車内に保管するか、紹介したベアキャニスターを活用することが推奨されています。
リーブノートレース(Leave No Trace)の考え方


熊対策の根底にあるのは「痕跡を残さない」という考え方です。
ゴミを残さないのはもちろん、匂いや食べ物のかけらも残さない。
それが熊を守り、自然を守り、そして人間の安全を守ることにつながります。
自分自身と野生動物の安全を守るために、万全の予防策を講じることは、常に時間をかける価値があります。自分の身を守ることもその一つですが、熊や他の動物が人間の食べ物に慣れないようにすることも重要です。
私たちがこれらの動物を保護する努力をすることで、彼らは野生を保ち、大自然の魅力の一部であり続けることができるのです。
まとめ
熊との距離を守ることは、自分の身を守るだけでなく、熊を守ることにもつながります。
熊対策は、特別な装備ではなく、一人ひとりの小さな心がけ。
「自分の快適さ」ではなく、「熊の未来」と「山を利用する人全員の安全」を守るためのもの。
熊に食べ物を与えない、ごみを残さない、自然に痕跡を残さない――その基本を守ることが、人間と熊の双方を守る最も確実な方法です。
「熊に会わないための工夫」 と 「熊を問題個体にしないための心がけ」 をセットで考えることが大切ですね。
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